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「地域医療国際支援センター」は反響大きく、10人入職‐吉田秀明・余市協会病院長らに聞く

北海道社会事業協会余市病院は、「地域医療国際支援センター」を設置し、医師不足対策をしている。2020年1月から、新たな取り組みを始めるというが、それはなにか。また、北海道社会事業協会は、厚生労働省が統合・再編の検討を要するとして公表した424病院のうち3病院をかかえる。北海道社会事業協会理事長であり、余市協会病院院長でもある吉田秀明氏らに話を聞いた。(2019年11月20日インタビュー)

(左)吉田秀明氏 北海道社会事業協会理事長、同会 余市協会病院院長、(右)武井弥生氏 「地域医療国際支援センター」ディレクター

(左)吉田秀明氏 北海道社会事業協会理事長、同会 余市協会病院院長、(右)武井弥生氏 「地域医療国際支援センター」ディレクター

――「地域医療国際支援センター」の制度を使って入職した医療職には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

吉田 制度を使えば、途上国の支援をしている海外滞在中も、病院から基本給が支給され、社会保険は継続します。たとえば、9カ月間余市に勤務し、3カ月間途上国に支援に行くといったことが可能です。同じ職種の方が2人以上集まってくれれば、病院としては通年で切れ目なく人財を確保できます。

 日本にいるときの勤務は、その人の能力に応じた通常勤務をしてもらい、帰国後はまた同じ勤務に戻ることができます。

 そのほかセンターでは、ネイティブスピーカーによる実践英会話教室(7回3000円)を開催したり、渡航相談などを行なったりして、途上国を支援したい医師・看護師や理学療法士などに、なるべく望むサイクルで途上国の支援ができるようにサポートをしています。

 今までに、「地域医療国際支援センターの制度があるから」といった理由で、余市協会病院に入職した医師は7人います。そのうち4人の医師がすでに制度を利用しており、複数回制度を利用している医師も2人います。

 東京でこの制度を紹介するセミナーを過去に3回開催しましたが、合計300人以上の医療人や学生にご参加いただき、実際に3人の医師と7人の看護師が入職することになりました。

 本制度は私たちが想像していた以上に医療職からの関心が高く、手応えを感じています。今後、医師など医療職不足の解消につながる可能性が大きくあると考えています。

――2020年1月から「地域医療国際支援センター」の新たな取り組みが始まるとのことですが、どのようなことでしょうか。

吉田 前センター長からバトンを渡され、新たにエチオピアや東ティモール、タンザニアのコンゴ難民キャンプやハイチ、ウガンダなどで国際的支援を行なってきた武井弥生先生をセンターのディレクターとして迎えることになりました。

 これまでは、前センター長がタイ・バンコクの大学の修士課程の研究生であったためバンコクとのつながりが濃く、大学側も国外からの留学生の呼び込みが熱心でした。それで手っ取り早く海外での活動プログラムを構築できたものですから、制度を利用する医師らの活動先のほとんどがこの大学でした。ですから、内容も地域医療支援という趣旨とは離れた感がありましたが、これからは渡航先やフィールドが限定されず、幅広い国際医療支援活動ができるものと思っています。

――武井先生は、「地域医療国際支援センター」でどのようなことを行う予定ですか。

武井 制度を利用する医師や看護師らは、大きく2つに分けられると思います。1つは、すでに国際医療の経験があり、かつ再渡航を希望する人が、帰国後にこの職場を求める場合です。もう1つは、海外医療は未経験だが興味関心があり、日本で医療を行いつつ国際医療のチャンスを待っている場合です。

 センターでは両者に、SDGsやグローバルファンドの対象となる三大感染症、「顧みられない熱帯病」や災害、あるいは国際紛争や難民など、世界の医療状況について準備学習ができる環境を整えたいと考えています。

 海外医療未経験の方には、私のこれまでのアジアやアフリカでの活動の経験をもとにアドバイスすることができるでしょう。

 本センターには、JICAのように構築された仕組みやフィールドはありません。どの国でどのような支援をしたいのか、その人にあった選択から始まり、どのようなルートで何を申し込む必要があるのかなどを、実践に沿ったかたちで具体的にサポートすることを考えています。

 また、日常的に使う医療用語を英語で言えるようになると、現地に行ってからの医療活動がスムーズですから、日本にいる時から使うことを奨励していきたいと考えています。

――「地域医療国際支援センター」の今後の展望についてお聞かせください。

吉田 今までは東京でセミナーを開催するなど、情報発信は東京を中心に行ってきました。しかし今後は、道内に軸足を移して、地元から入職する医療職を増やし、より長く働いてもらえれば良いと考えています。北海道はとくに冬の自然が厳しいですから、その実際を知っている人の方が良いと思った次第です。

 また、本センターの活動は入職する職員だけを対象にするのではなく、地域医療と途上国の医療をつなげたいすべての人をサポートし、日本の地域医療研修の本拠地になればと夢見ています。余市医師会のスローガンは「地域医療のメッカ 余市」ですしね。

 予算の掛け方も変わってくるでしょう。今までは、人材獲得のために派遣会社などに費用を払ってきましたが、今後はその分、「地域医療国際支援センター」に予算を付けていきたいです。投資先が変わったと思えば、こちらの方が遥かにリターンが大きそうです。センターの活動は、無限大の可能性を秘めています。

施設外観

北海道社会事業協会余市病院

◆吉田 秀明(よしだ・ひであき)氏

北海道社会事業協会 理事長、同会 余市協会病院院長。
1982年北海道大学医学部卒業後、同大学病院第2外科・循環器外科関連病院で研修し、1999年余市協会病院外科着任。日本外科学会専門医・指導医。日本消化器外科学会専門医、日本胸部外科学会認定医、国際心臓血管外科学会会員。

◆武井 弥生(たけい・やよい)氏

北海道社会事業協会余市病院「地域医療国際支援センター」ディレクター。
1982年北海道大学医学部卒業後、東京女子医大で内科研修。1989年リバプール熱帯医学校熱帯小児学修士。1991年エチオピアで医療活動。1993年北大産婦人科入局し関連病院研修。2001年国連東チモール暫定政府下国立病院勤務。2003年タンザニア難民キャンプ保健要員。2013年ウガンダうなづき症候群患者家族支援など途上国医療に携わる。日本産婦人科学会専門医。日本熱帯医学会評議員。

この記事はm3.com様より転載の許諾をいただいております。 https://www.m3.com/news/kisokoza/720915

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